2022年05月11日

思考と感情が体に及ぼす影響

海中

今までこのブログでは思考や感情を用いて慢性痛を改善することを記してきましたが、
本当に思考と感情だけで痛みが改善するのか?
と疑問に思っている方のほうが多いのではないかと思います。

そこでプラシーボとノーシボの例をいくつか記したいと思います。
プラシーボとは
偽薬(本当は薬ではない成分)を投与したにも関わらず、症状が回復したり和らいだりする現象
ノーシーボとは
無害なものでも有害だと思い込んでしまうと、病気になったり、最悪の場合死に至る現象

のことです。

これらの事例をみていくことで思考と感情が体に及ぼす影響の強さを知ることが出来ます。

まず最初の例は

「思い込みで死」です



1970年代初頭、セントルイス郊外に住む靴のセールスマンを引退したサム・ロンドの例


一九七〇年代初頭、セントルイス郊外に住む、靴のセールスマンを引退したサム・ロンドは、
嚥下障害を感じるようになった。しばらくして医者に行くと、医者は彼が転移性食道癌を患ってい
ると診断した。当時の常識で転移性食道癌は不治の病で、一度かかったら生還した例はなかった。
その診断は死の宣告と同義のため、担当医はそれなりに重々しい口調でこの宣告をした。
余命を少しでも延ばそうと、担当医はロンドに食道と胃の癌細胞におかされた部分の切除術を提
案した。医者を信頼していたロンドはこれに同意し、外科手術を受けた。予測された程度の改善は
見られたものの、容体は間もなく悪化していった。そこにロンドの肺の画像が悪いニュースの追い
打ちをかけた。転移した癌が肝臓の左葉全体に広がっていたのだ。担当医は悲しい顔で、ロンドの
余命は持ってあと数か月だと告げた。

それでロンドと新婚の妻(2人とも70代)は、妻の実家のある、300マイル(約4 80キロメートル)離れた
テネシー州ナッシュビルに引つ越すことにした。引つ越して間もなく、ロンドは地元
の病院に入院し、内科医クリフトン・メドーが担当医となった。メドー医師が初めてロンドの病室
を訪ねたとき、そこにいたのは毛布の中に小さく丸まって、ほとんど死んでいると思しき髭面の患
者だった。ロンドは無愛想で会話に応じることもなく、看護師はロンドが数日前に入院した当初か
らずっとこんな様子だと説明した。

ロンドの血液検査結果を見ると、糖尿病のため血糖値は高かったが、それ以外の数値はほぼ正常。
肝酵素はほんの少し高かったが、それは肝臓癌患者特有の数値だった。さらなる検査の結果を見て
も、それ以上の問題は見つからなかった。余命宣告された哀れな患者にしては福音というべきこと
だった。新しい担当医の指示で、ロンドは嫌々ながら理学療法、強化流動食、そしてかいがいしい
看護と世話を受けることになった。数日後、ロンドは少し元気を増し、不機嫌な態度が減っていつ
た。そしてメドー医師に、自分の身の上話をするようになった。
ロンドの最初の結婚で得た妻は、ロンドにとって、かけがえのないソウルメイトだった。二人は
子宝にこそ恵まれなかったが、それ以外では概ね幸福な結婚生活だった。二人ともボートが趣味だっ
たため、定年後には大きな人造湖のほとりにコテージを買った。ある夜半、近くの土製ダムが決壊
し、水の壁が彼らのコテージを襲い、押し流してしまつた。ロンドは漂流物につかまり、奇跡的に
命を取り留めたが、妻はとうとう見つからなかった。

「大切にしてしたものを、あのとぎすべて失くしたんです。」とロンドは医師に言った。「私のふ イ
も魂も、あの晩の洪水とともに消えてしまいました。」
妻を亡くして半年経った頃、ロンドはまだ深い絶望の底にいたが、食道癌が見つかり、外科手術
をした。そしてそのときに二度目の妻と出会い、再婚した。親切な彼女はロンドの不治の病につい
ても理解して、生きている間は面倒を見てくれると約束してくれた。結婚から数か月経った頃、二
人はナッシュビルに引つ越してきた。それ以降はメドー医師も知っているとおりだつた。
ロンドが身の上話を終えると、聞き入っていたメドー医師は感嘆し、慈愛に満ちた声でこう言った。
「それで、私にどうしてほしいですか?」死が差しせまった患者はしばらく考えてからこう答えた。

「今年のクリスマスを妻とその家族と一緒に過ごしたいので、そこまでは生きていたいです。彼女は
私によくしてくれましたから。クリスマスまで生きられるように、先生お願いします。私の望みはそれだけです。」

メドー医師は、ベストを尽くすと約束した。

ロンドが10月下旬に退院したとき、体調は入院時よりずっとよくなっていた。メドー医師は驚
きつつ、ロンドの復調を心から喜んだ。その後、一か月に一度の経過観察で、ロンドは会うたびに
元気になっていった。

しかしクリスマスの一週間後(元日)に、ロンドは妻によって病院に運び込まれた。

メドー医師は、再び死にかかっているロンドを見て驚いた。調べたところ、見つかったのは微熱の他、
胸部X線に映った小さな肺炎の病巣だけで、彼の呼吸には何の問題もなかった。血液検査の
結果も良好で、その他の生検の結果もすべて異常はなかった。メドー医師は抗生物質を投与し、
酸素吸入をして回復を図ったが、それから24時間を持たずにサム・ロンドは死んだ。
この話は末期の癌患者によくある残念な顛末だ、と思うだろう?
ところがそう簡単ではない。
その後病院でロンドの遺体解剖を行ったところ、不思議なことが分かった。彼の肝臓は癌細胞だ
らけ、ではなかった。肝臓の左葉にごく小さい癌の塊、それに肺にもっと小さい癌が一つあるだけ
だった。真実を言えば、どちらの癌も彼の命を奪うほどのものではなかった。しかも食道周辺には
何の異常も見られなかった。セントルイス病院で撮った肝臓の画像から見つかった異常は、明らか
に間違いだった。
サム・ロンドの死因は食道癌でも肝臓癌でもなかった。もちろん再入院した際に患っていたごく
軽い肺炎のせいでもなかつた。彼は、身近な人々全員が、"彼は死ぬものと思っていた〃というき
わめて単純な理由で亡くなった。セントルイスの病院の担当医は、ロンドが死ぬと宣告し、ナッシュ
ビルのメドー医師もまた、彼が死にかかっていると思った。ロンドの妻も実家の家族も皆、彼には
死が迫っていると思つていた。

サム・ロンドは思考だけで死んだと考えることは可能だろうか?

思考はそれほどパワフルだなんてことがあり得るだろうか?

もしそうなら、この話はそれほどレアケースと言えるだろうか?

(ジョー・ディスペンサー博士著:あなたはプラシーボより)



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